僕の乗る「アメリカン航空1718便」ボストン行きは、ほとんど定時の出発。
機材はボーイング737-800、ファースト・クラス(アメリカ国内線は2クラス制)は2-2、エコノミーは3-3のコンフィギュレーション。
僕は3B(と言っても一番前)という足元が一番広いベスト・シートを確保、年齢は相当上のいかにもベテランのFAの朝食サービスを受けながら、ボストンまでは2時間15分のフライトです。
写真のトレイの後、温めたパンが配られます。
僕はベーグルとクリームチーズを選びましたが、実際にはほとんど食欲がありません。
お隣の体格の良いおば様と話も弾んで、シカゴとは時差1時間あるので時計も直して、ボストン時間の午前11時ボストンの「ローガン空港」に無事到着です。
「ローガン空港」は「オヘア空港」に比べるととてもコンパクト、荷物の出てくるのを待ちます。
僕の荷物はプライオリティ・タグが付いているはず、でもなかなか出てこない・・・どうしたんだろう。
ほぼ全荷物が出てくる終わり頃になって、僕の荷物が・・・良かった、ロスバケ(ロスト・バゲッジ)じゃなかった・・・。
と、思った瞬間、あっ!
何だ、これ!
こ、壊れてるじゃん!(怒)
この10年くらい僕と共に世界中を駆け巡った「リモワ」の大型スーツケースの2方向が見るも無残に変形している。
穴まで開いている。
蓋同士が大きくずれて、口が開いて閉まらなくなっている。
今までスーツケースの破損とか友人の話では聞いたことありましたが(多少陥没した、傷がついた、一部が割れた、取っ手が壊れれた・・・)、僕個人ではまだ未経験。
初体験のトラブルです。
なので、もう僕はプチ・パニック状態。
どうしよう、どうしたら良いんだろう・・・。
ここはボストンのローガン空港、何かにつけてお世話になっているJALだってここにはまだカウンターはないし(JALは来年ここに就航予定)、空港中探したって日本語でアシストしてくれる人なんか、いなそうです。
心細い。
でも行動するのは今、今きちんと「事故証明書」なりを取ってしっかり対処をしておかないと、後になるとどんどん事が複雑になる。
何しろ僕のアメリカ旅行は極短期、ボストンに2日いた後はニューヨークに飛び、そしてすぐ日本に帰るんだから・・・。
「事故証明書」って英語で何て言うんだっけ・・・「notice of damaged article」とか言うのかなぁ・・・文章に書くとこんな長々としたものになりますが、荷物を受け取った数秒後には、眼に入った「バゲッジ・サービス」カウンターに急いでいました。
幸いこのカウンター、混んでいません。
受け付けてくれた「アメリカン航空」のスタッフ、僕の荷物にチラっと眼をやるだけで、淡々と事を進めます。
ま、彼女にしたらこれが仕事、毎日のように起こっている「よくあること」なのでしょう。
スタッフは数人いて、出たり入ったり。
複数の人に同じ事を何度聞かれて、僕のイライラは頂点に・・・。
PCに僕の記録を入れ終えて「Checked article damage notice」なる「事故証明書」(?)が僕に渡されたのが30分後くらい、もちろんその間に、僕はこのカウンターや破損部位を各方向から証拠として撮影、マネージャーにも出てきてもらいます。
奥から出てきた年配の女性、責任者とも名乗らず、名刺もないと言うことで、とりあえず今後の交渉先として彼女の直筆で、彼女の電話番号、メールアドレスをその事故証明書に上書きしてもらいました。
そしてこの後どうしたら良いのか、彼女に聞きます。
彼女はあくまでも冷静。
彼女からはあまりしゃべらずに、僕の眼をしっかり見ながら、僕の話を聞きます。
何か値踏みされているよう・・・。
そうだ、ここはアメリカ、今回の件は絶対に相手に非があるケース。
スーツケースに傷程度なら、スーツケースなんて消耗品だから仕方ない、でもこれは違う、完全なる破損だ。
彼女に僕が短期間でアメリカ数都市を回って日本という外国に戻る旅程である、この壊れたトランクでは明後日のニューヨーク行きにだってチェックインは出来ないだろう、替わりのバッグがどうしても入用、そしてこのバッグを早く元通りにして返してもらいたい、僕はアメリカン航空を含む「ワンワールド」の最上級(エメラルド)メンバー、シカゴからボストンへはファーストクラスで飛んできた・・・を、言葉の端々に意図的に怒気を含んで説明、僕のステイタスもことさらに強調します。
「俺は怒っているんだぞ」モードを全開に、という訳です。
ま、もちろん本心でも怒っているというか、相当にイライラしているのですが・・・。
僕の言い分を聞いた彼女、「もう少し待ってください」と奥に・・・きっと上層部と相談しているのでしょう。
待つこと約20分、「代替のケースを提供します」と安っぽい小さめのソフト・スーツケースを持って出てきます。
僕の「リモワ」は「預かって修理可能なら修理して、修理不可能なら同等なものを送ります」とも言います。
そこで僕は「貴女は僕の旅程を理解していますか?修理して日本まで送ってくれるんですか?修理不可能ならこれの新品を日本まで送ってくれるんですか?」と畳み込みます。
彼女、首を振りながらまたも
奥に引っ込みます。
ただでさえ短い僕のボストン・ステイの時間がどんどん減っていきます。
約15分後、彼女再登場。
「貴方がこれと同じものをショtピング・センターで買ってください。そしてその領収書をアメリカン航空に送ってください」
一瞬このオファーに心揺らぎますが、見知らぬ街でそんなことをしている時間がもったいないし、「アメリカン航空」から小切手なんて形で送金されてきたら換金にも手間取る。
そこで彼女の答えがおそらく「NO」であることを見越して「ボストンのどこでこの高級なドイツのブランドを売っているんですか?教えてください」と。
「高級」と「ドイツのブランド」をまたまた強調して・・・。
彼女、無言で奥に引っ込みます。
この間、僕の壊された「リモワ」のトランクの荷物を、「アメリカン航空」が用意してくれたバッグに移し変えますが、穴の開いた場所のすぐ下にあったらしい奥さん用に買った「ドクターブロナーズ・マジックソープ」のボトルが傷つきソープが少量ですが漏れ出しているのを発見。
幸い念のためと日本から持参したレジ袋の中に入れておいたので、トランク中に広がるという状態ではありませんでした。
もちろんこれもやや大げさに彼女に報告。
そしてとうとう事の発覚から約2時間後、「これと同じブランド、同じデザインのバッグを、FEDEXのオーバーナイト・デリバリー(翌日配送)で明日の朝の6時には、貴方のホテルに届けます」という言葉を引き出しました。
取りあえず、やったぁ!
でも、まさかここまでになるとは思わなかった・・・・。
明日にはこれの新品が僕のところに届く、想い出が詰まった愛用の「リモワ」がなくなるのは嫌だけど、10年前のものが新品になるのなら・・・。
やっと僕はしかめっ面を止め、彼女との話にも普段を顔をするようにします。
「でもね、あなたのスーツケースより2インチだけ小さいのよ、どう探してもそれだけしか見つからないの。それでOKよね」とも言われますが、もうこれは引き時です。
OKします。
彼女の顔にも安堵の表情。
「リモワ」にも様々な種類・大きさがあるし、何しろ僕のは10年前のだし、ま、2インチ小さいだけならOKするしかないでしょう。
「貸し出しのこのバックがニューヨーク行きに乗るときに、ここに返してね」
はい、はい、了解しました。
僕は「アメリカン航空」の貸してくれた安っぽいソフト・スーツケースでタクシー乗り場に向かいます。
貴重なボストンの時間を2時間以上ロスしてしまいました。
急がなくちゃ・・・ボストンこそ、僕の今回の旅のメインの街なんですから・・・。
一件落着?
ま、ほぼそうでしたが、実はこの後も大変。
朝の6時に届く予定の新品のスーツケースがいつまでたっても届かなかったのです。
スーツケースが何時届くのか、僕が散々交渉した女性の電話番号に何度もかけるのですが、他の人が出てまたその人に事情を一から説明したり、PCに残されているはずの「Checked article damage notice」を確認しろと言っても「担当者でないので、良く分からない」(何?それ!)、「彼女はいま外出中」(本当?)・・・全然今の状況が掴めません。
これを観光しながらやり取りしたので、イライラも持続するし・・・。
結局は「リモワ」の新品をボストン滞在中に手にすることが出来たのですが、あぁ、大変だった。
最終的には「フォーシーズンズホテル・ボストン」のコンシェルジュが、「どうぞ観光していてください、交渉はすべて私が上手くやりますから」と胸を張るので彼にお任せ、本当に彼は見事にFEDEXの荷物を探し当て、僕の部屋で梱包を開封してくれたのです。
しかし・・・これは僕がOKしてしまったので仕方ないのですが、届いたのは「リモワ」は「リモワ」でも安いタイプの物だったし、2インチ小さいと全体として随分小さく見えるもの。
でもOK、自分としても頑張れるだけ頑張ったし、これ以上やったらクレーマーになるかも・・・。
(もうなってる?まさか・・・)
以上が僕のボストンの悲劇第一弾、実は別件でまたトラブルが起きるのです。
それはまた後ほど。
今日は文章がだらだら長くてすみません。